「おうちのふく -世界で1着の服-」
「おうちのふく-世界で1着の服-」は、図書館でふと目に留まった本です。
表紙のピンクのワンピースの女性がとても素敵!パラパラめくると、個性的な洋服を着て微笑んでいる人たちがいっぱい。
タイトルと写真が気になって、借りてみました。
最初、「おうちのふく」というタイトルから、自分のお気に入りの服を紹介する本なのかな、と思っていました。そうではなくて、この本に登場する人たちの服は、すべて一人の人が作ったものだったのです。
それは、この本の著者の行司千絵さん。
なんと、この方の本職は新聞記者で、この本に載っている服は、本職の片手間に作られたものなんだそうです。
そして、表紙のワンピースの女性は著者のお母様。
はじめはご自身とお母様のために服を作られていたのですが、だんだんにファンが増えていったそうです。
頼まれた相手の意見はほとんど聞かず(技術的に制約があって難しい、等の理由があるそうですが)、著者が持つ相手のイメージから作られる服。
そう、この本の中の服はすべて、その人のためだけに作られた、世界で1着の服なのです。昔は、服は、誰かのために、誰かを思いながら作っていたものだったということを思い出しました。
たくさんの服の中でも、特にお母様の服が素敵でした。やっぱり、一番わかっている人だからでしょうか。
年を重ねてなかなか市販の服であうものが見つからなくなったお母様に、せっせと服を作りつづけた著者。そんなに必要ないと言いつつ、手作り服を着るようになって、髪型もファッションも変化していった母上。
街を歩いていても、「奥さん、その服すごくステキ」「その服どこで買いはったん?」と見知らぬ人から次々声をかけられるようになったそうです。(著者自身は、「私が自分で作った服を着ていても、そんなことを言われたことなんてない!」と悔しがっておられますが…。)
また、ある方のコートには、タヌキの毛皮のポケットがついていて、とってもかわいいのです。作ってもらった方も、タヌキのポケットに「たぬこ」と「たぬきち」と名付けて、かわいがっているそうです。
他にも、恐竜の形のポケットをつけたり、アメリカ製の色とりどりのビーズをボタンにしたり、フォークロア調のリボンをつけたり、と発想がとてもユニーク。
そして、それらの服を着た個性的な人たちの写真を見るのも楽しいけれど、ときおり関西弁で語られるエッセイが、これまたとっても面白いです。さすが、新聞記者さんです。
巻末で、瀬戸内寂聴さんも、「私でなければ着こなせない個性的なガウンを!!」と注文されていました。
私も、機会があれば、ぜひ作ってほしいです。私ってどんなイメージなのか、どんな服が届くのか、待っている間もわくわくしますよね。
流行に左右されず、着心地のいいシンプルな服が何枚かあれば十分。…と思いつつ、着なくなった服を山ほどためこんでいる私。洋裁を習って、シンプルなワンピースとか作ってみたいなあと思いつつも、何年も構想のまま…。
あらためて、服と自分との関係を考えさせられる一冊でした。
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